手紙

部屋の整理をしていたら、父親からの手紙が出てきた。

70歳に近くなっていたと思う。

私は遅く生まれたから、兄弟姉妹と歳が離れている。

まだ私が独り身で寮生活をしており、父は田舎で一人で

生活していた頃のものだ。

内容は日常的な他愛のないものである。

『元気にしているか。最近は病院通いも増えてきたが、

俺も元気である。バスや電車（市電）もタダだから、

しょっちゅうあちこちへ出かけている。間もなくおはら

祭りがあるので・・・・』

一目見た瞬間に在りし日の父の姿が浮かび、そのころの

風情も蘇ってきた。

父独特の文字で、万年筆で丁寧に綴られている。

今は何かにつけてパソコンで作成した文面が多く、誰彼

でなく、企業からのものでも文字は同じだ。

読み返そうとは思わない。

やはり手書きで書かれた手紙は、後になっても、その頃

を思い出し、また故人をも懐かしくさせてくれる。

手書きだと漢字が思い出せず、ついスマホに、目の前に

パソコンがあれば、なおさらだ。

しかしながら手書きだと漢字にしろ、脳の活性化に併せ、

送られた方にも気持ちが十分に伝わるに違いないと、改

めて感じさせられたひと時であった。